001 考えると、釣りはもっと面白い



 ちゃ〜坊が、なにやら大きなバッグを抱えて港へやってきた。

ちゃ〜坊
「みなとじい〜! 見て見て〜!」

みなとじい
「なんだ、それ?」

ちゃ〜坊
「新しい釣り道具〜!」

みなとじい
「ずいぶん買ったな〜」

ちゃ〜坊
「ロッドにリールにライン、それからルアーもいっぱい! これだけあれば、いっぱい釣れるでしょ〜(^^)」

みなとじい
「釣れるといいな」

ちゃ〜坊
「……それだけ?」

みなとじい
「それだけ」

ちゃ〜坊
「もっとこう……『その道具ならバッチリだ!』とかないの?」

みなとじい
「使い方、分かってるのか?」

ちゃ〜坊
「…………」

みなとじい
「分かってないな」

ちゃ〜坊
「これから覚えるんだよ〜(^^;」

 釣具屋さんへ行けば、たくさんの道具が並んでいる。

 ロッド、リール、ライン、ルアー。

 同じように見えるものでも、長さが違ったり、太さが違ったり、形が違ったりする。

ちゃ〜坊
「こんなに種類があるんだから、どれが一番釣れるのか教えてよ」

みなとじい
「そんなもの、ないぞ」

ちゃ〜坊
「えっ?」

みなとじい
「釣る魚も違えば、釣り場も違う。釣り方だって違うだろ」

ちゃ〜坊
「じゃあ、高いやつ!」

みなとじい
「値段で魚が釣れるなら苦労しないな」

ちゃ〜坊
「じゃあ、どうやって選ぶの〜?」

みなとじい
「考える」

ちゃ〜坊
「出た! それ一番困る答え〜(^^;」

 どんな魚を釣りたいのか。

 どんな場所で釣るのか。

 どんな釣り方をしたいのか。

 それが変われば、使いやすい道具も変わってくる。

 でも、道具の名前や特徴を丸暗記すればいいという話でもない。

みなとじい
「ちゃ〜坊。リールのドラグって何のためにある?」

ちゃ〜坊
「魚を釣るため!」

みなとじい
「間違っちゃいないけどな……」

ちゃ〜坊
「ほら、正解!」

みなとじい
「じゃあ、なんで糸が出る?」

ちゃ〜坊
「…………サービス?」

みなとじい
「誰へのサービスだよ」

ちゃ〜坊
「魚?」

みなとじい
「魚を接待してどうする」

 知らないことがあるのは、別に恥ずかしいことじゃない。

 長く釣りをしている人だって、突然聞かれたら説明できないことはたくさんある。

 大切なのは、

 「なんでだろう?」

 と思うこと。

 そして、少し考えてみること。

ちゃ〜坊
「でもさ、分からなかったら誰かに聞けばいいじゃん」

みなとじい
「聞けばいい」

ちゃ〜坊
「じゃあ教えてよ」

みなとじい
「その前に、自分ではどう思う?」

ちゃ〜坊
「また考えるの〜?」

みなとじい
「考えてから聞いたほうが、答えも面白くなるぞ」

ちゃ〜坊
「面白くなる?」

みなとじい
「自分の考えと同じだったり、全然違ってたりするからな」

 人から聞く。

 本で読む。

 ネットで調べる。

 それも大切なこと。

 でも、そこで終わりじゃない。

 「そうなんだ」で全部を鵜呑みにするのではなく、

 本当にそうなのかな?

 と一度、自分でも考えてみる。

 そして次に海へ行ったとき、試してみる。

 うまくいったら、

 なんで、うまくいったんだろう?

 うまくいかなかったら、

 なんで、ダメだったんだろう?

 また考える。

ちゃ〜坊
「ずっと考えてるじゃん(^^;」

みなとじい
「それが釣りだろ」

ちゃ〜坊
「魚を釣るのが釣りじゃないの?」

みなとじい
「それだけだったら、こんなに長くやってないよ」

ちゃ〜坊
「あ……」

 知る。

 考える。

 試してみる。

 失敗する。

 また考える。

 そうやって少しずつ、自分の中に経験が増えていく。

 最初はたまたま釣れた一匹でもいい。

 でも、その一匹を見ながら、

 「どうして釣れたんだろう?」

 と考えてみる。

 潮だったのか。

 場所だったのか。

 ルアーの動かし方だったのか。

 それとも――本当にただの偶然だったのか。

 答えが分からなくたっていい。

 考えたこと自体が、次の釣りへつながっていく。

ちゃ〜坊
「じゃあ、みなとじい。このWebムックを全部読めば、いっぱい釣れるようになる?」

みなとじい
「知らん」

ちゃ〜坊
「ここまで話して、それ〜!?(^^;」

みなとじい
「読んだだけじゃ魚は釣れないぞ」

ちゃ〜坊
「じゃあ、どうするの?」

 みなとじいは、目の前の海を指さした。

みなとじい
「行って、やってみろ」

ちゃ〜坊
「……はい」

 ちゃ〜坊も海を見る。

 少し考えてから、もう一度みなとじいを見た。

ちゃ〜坊
「ところで……ドラグの糸が出るのって、やっぱり魚へのサービスじゃないの?」

みなとじい
「そこからか〜(^^;」




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